アーサー王の正体は、ウェールズの王さまだった!? 〜「白い歯の王」オウァインの物語〜

「アーサー王」と聞くと、円卓の騎士や聖剣エクスカリバーを思い浮かべる人が多いと思います。
実はこの伝説、ウェールズに実在した王さまの物語がモデルになっているかもしれない、という説をご存じでしょうか。
その候補として名前が挙がるのが、5〜6世紀のウェールズにいた王、オウァイン・ダントグウィン。
あだ名は「白い歯の王」。なんだか可愛らしい響きですが、その裏には知られざるドラマが隠れています。
今日はこのオウァインさんの物語を、ウェールズ史をまったく知らない人でも楽しめるようにゆる〜くご紹介します。
舞台は「暗黒時代」のウェールズ
オウァインが生きたのは5世紀後半〜6世紀初め。ちょうどローマ帝国がブリタニア(今のイギリス)から撤退し、統一政権が崩れて各地の豪族たちが勢力争いをしていた、いわゆる**「暗黒時代」**と呼ばれる混乱期でした。
このころ、ウェールズ北部では「キネダ大王」という人物の一族が力をつけ、後のグウィネズ王国の土台を作ります。オウァインは、そのキネダ大王のお孫さんにあたる人物。お兄さんの「ロングハンド」ことカドワロンと力を合わせ、ウェールズ北部をまとめあげていったと伝えられています。
つまりオウァインは、伝説の英雄というより、兄弟でがんばって国を大きくした地方の王さま、というのが実像に近いイメージです。
「白い歯」の正体は…実は「剣」だった?
オウァインのあだ名「ダントグウィン」はウェールズ語で「白い歯」という意味。ちょっと不思議なニックネームですよね。
でも実はこの「歯」、剣の刃(ブレード)を指す比喩だったのでは、という説があります。つまり本当の意味は「白く輝く剣を持つ王」。
こう考えると、一気にアーサー王伝説とのつながりが見えてきます。そう、アーサー王といえば聖剣エクスカリバー。「白く光る剣の王」という異名と「聖剣を掲げる伝説の王」――このイメージの重なりは、偶然にしてはできすぎている気がしませんか?
オウァインは兄ロングハンドとともに、海を越えて攻めてきたスコット族を撃退し、領土を広げたとも伝えられています。剣を掲げて敵と戦う姿は、まさに騎士物語そのものです。
甥っ子との骨肉の争い「カムランの谷の戦い」
オウァインの物語には、悲しいクライマックスが待っています。
兄ロングハンドが亡くなった後、王位はオウァインが継ぐことになりました。ところがこれに納得できなかったのが、甥にあたるマエルグウィン。
叔父と甥、二人の対立はやがて戦にまで発展し、「カムランの谷」という場所で激突します。この戦いでオウァインは敗れ、命を落としてしまいました。勝ったマエルグウィンはグウィネズの新しい王となり、後に強大な王国を築いていきます。
ここで注目してほしいのが、この「カムラン」という地名。
実はアーサー王伝説でも、アーサー王が甥のモルドレッドと戦って命を落とす最後の戦いが「カムランの戦い」と呼ばれているのです。
- 叔父 vs 甥、という構図
- 「カムラン」という同じ地名
さすがにこれだけ一致していると、単なる偶然とは思えなくなってきますよね。
史実がいつしか伝説に変わった?
こうした共通点から、研究者の間では「オウァインこそアーサー王のモデルの一人ではないか」という説が唱えられています。根拠をまとめると、こんな感じです。
- 「白く輝く剣」= エクスカリバーを連想させるあだ名
- 甥との戦い「カムランの戦い」が実話として伝わっている
- グウィネズ地方をまとめあげた実力者だった
- 勇敢で正義感の強い人物として語り継がれている
これを当てはめると、
オウァイン=アーサー王、マエルグウィン=モルドレッド
という、まるでパズルのピースがはまるような対応関係が見えてきます。
つまりアーサー王伝説とは、まったくのファンタジーではなく、ウェールズに実在した王家の歴史をもとに、少しずつ脚色されて生まれた物語なのかもしれません。
まとめ:小さな王さまが残した、大きな伝説の光
オウァイン・ダントグウィンという名前は、世界的にはほとんど知られていません。それでも彼の「白い歯(=白く輝く剣)」というあだ名は、勇気と正義の象徴として語り継がれ、いつしか「アーサー王」という壮大な伝説へと姿を変えていったのかもしれません。
ウェールズの片隅で、兄弟で国を築き、甥との戦いに散っていった一人の王さま。
その物語が、めぐりめぐって世界中で愛される騎士物語の原点になったのだとしたら――なんだかロマンがありますよね。